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自費出版の基礎知識


自費出版と商業出版

自費出版とは、読んで字のごとく、著者が自分で費用を出して本を出版することをいいます。一方、版元(出版社)が自社の費用で出版物を刊行するのが商業出版です。自費出版と商業出版の一番の違いは、出版費用の負担者が著者、出版社のどちらであるのかということになります。

また、内容的には個人の白分史や追悼集のほか、会社の社史なども自費出版といえます。これらは、いずれも記録的・記念的な意味合いをもち、少部数を知人縁者、関係者に配布するものであり、一般の読者を対象としていません。 小説やエッセイ、詩、俳句、短歌など、創作表現のひとつとしての自費出版も盛んですが、この場合にも本の大部分は知り合いなどに贈呈、販売するのが通例です。つまり、特定の関係者などを対象に発行することが、自費出版の特徴 です。

それと比較して、商業出版の場合は、未知の不特定多数の読者に向けて販売 し、その出版物が利益を生まなければなりません。出版社にとって出版物は商品です。売れない商品を作るわけにはいきません。そのため、あくまでも売れる商品ということを念頭に企画を立てらることになります。テーマ、ターゲッ ト、執筆者、発売のタイミングなどを検討し、本作りにおいても全体の構成から見出しの立て方、レイアウト、本のタイトル、帯のコピー、装丁まで、あらゆる面で商品性を追求します。販売面に関しても、流通機構にのせて配本され、販促活動がとられます。

商業出版とは、「企画」「編集」「販売」の要素を含んだ、営利を目的とした出版であるともいえます。

このような違いが自費出版と商業出版にはあるのです。


自費出版を扱う会社(窓口)

自費出版の制作を扱っている会社を大別すると、次のようになります。

1)印刷会社
2)自費出版専門会社
3)出版社の子会社
4)出版社の一部門

自費出版しようという人が、まず考えるのは、1)の印刷会社でしょう。原稿を印刷して本にするだけならば、印刷会社で十分に可能です。

しかし、本作りに関する具体的なノウハウについて丁寧に助言してくれる印刷会社は、残念ながらまだそれほど多くありません。カバーデザイン、装丁、 文章チェック、校正などの編集作業は、基本的には著者がすべて自分でやらな くてはなりません。その代わり、用紙・印刷・製本代だけという本を作る上での最低限の費用だけで本を作ることが可能です。そのため、費用を極力安くしたい場合や、デザインや編集に自信がある場合は、印刷会社に発注するのは一 つの方法です。

2)の自費出版専門会社の場合は、編集スタッフが主力の会社になります。 別の呼び方をすれば「編集プロダクション」です。

ここでは、文章作成(聞き書きも含む)、原稿整理、校正、カバーデザイン、装丁などの編集作業をやってくれます。しかし、出版社ではありませんから、主要な取次会社の口座はもっていません。取次会社とは、出版社から本を仕入れ、全国の書店に配本する「問屋」のことです。トーハン、日販、大阪屋、太洋社、栗田などがあります。この問屋の口座がないと、原則として、書店で本を売ることはできないのです(*1)。したがって、2)の自費出版専門会社の場合は、本自体を作ることでは問題ありませんが、販売に関しては著者が自ら行う必要があります。

3)の出版社の子会社は、とくに大手の出版社にみられる窓口です。○○出版サービスなどという名称で各社が営業しています。ベテラン編集者がスタッフの主力になっていますから、編集・デザインも安心してまかせられます。しかし、本の流通は原則として行っていません(行っているところもあります)。この出版社の子会社(○○出版サービス)を窓口に選んだ場合は、なんと言っても本のイメージアップの効果が期待できます。有名出版社の名前を名のっていますので、そこから出版したようなイメージを演出できるからです。 もちろん、その名義料の分だけ、制作料金も他の窓口に比べて割高になるのは仕方がありません。

最後の4)の出版社の一部門ですが、これは中・小の出版社や地方の出版社 に多くみられる窓口です。

自費出版専門会社、出版社の子会社と同様、本作りに関しては、原稿作成・ 原稿整理・校正などの編集やデザインを含め、著者の希望にきめ細かにこたえてくれます。また、出版社として本の流通も行えますので、企画や原稿がすぐれたものなら、取次経由で書店に配本(委託配本)することもできます。

ちなみに、ピーワークはこの出版社の一部門になります。

*1 小出版社の本の流通を扱っている地方・小出版流通センターを利用するか、直接書店に頼んで本を置いてもらえれば、少部数に限って本の販売も可能になります。


編集内容、印刷によって料金は大幅に違う

「複数の会社から見積もりをとってみたら、金額がずいぶん違った」

このことは、自費出版を計画される方が、よく経験されることです。

極端な場合、同一部数・同一仕様(原稿枚数、写真点数、本の大きさ、上製本か並製本か、用紙の種類・厚さ、何色刷りかなど)にもかかわらず、一番安い会社は100万円、高い会社は200万円以上ということもあります。

なぜこれほどの差が出るのでしょうか。それには、大きく三つの理由が考えられます。

一つは、編集内容の違いです。

受けとった原稿を丹念に読み、文章上の矛盾や疑問のある部分を整理して、著者に伝える。その上で原稿を整理する。複数回の校正をし、見出しやデザインについてもよく考える――こういう手間をおしまない、丁寧な編集もあります。また、一応の文章の体裁になっていれば、かまわず入稿する、カバーデザインもデザイナーを使わないというような割り切った編集のやり方もあります。このような編集への手間のかけ方の違いが、料金の違いとなって現れます。

二つめは、印刷方式の違いです。

印刷には大きく分けて、製版フィルム→刷版(アルミ製)→印刷という方式と、この製版フィルムを省略する「ダイレクト」印刷の二通りがあります。この違いによっても料金は異なります。また、製版の元になる版下をどのような工程で制作するかという違いもあります。写植で文字を打って版下を作成するのか、DTPを利用して版下を作らずに、直接製版フィルを作成するのかによっても価格は違ってきます。

三つめは、その会社の価格設定です。

価格設定が低価格のところもあれば、高額なところもあります。

以上は、同一仕様、同一部数の場合ですが、使う用紙が違ったり、多色印刷になったり、部数が違ってくれば、当然それは制作料金の違いになってきます。

また、凝った作りの本を作ろうとすればするほど、制作料金は高くなっていくのは当然のことです。


本を作るのにかかる費用

一冊の本が完成するまでには多くの人手がかかります。組版、印刷、製本などの製作工程(ハード面)のほかに、原稿整理、レイアウト、校正、カバーデザインなど、ソフト面の工程が加わってきます。白費出版では原稿をそのまま文字組みして印刷するなど、ソフトに関わる要素はほとんど著者自身が行なうという場合もあります。この場合では、ハード面の費用だけですむことになります。

したがって、白費出版のタイプによって費用はさまざまになります。

本の製作工程にも幾通りかの方法があります。たとえば組版でも、ワープロ入力したものをそのまま出力して版下として使用するものから、写植やDTPで印画紙を出力するもの、直接製版フィルムを出力するものもあります。製本の仕方にも並製本と上製本があります。本文用紙や表紙、カバーなどの材料によっても費用が違ってきます。

このほかにも、文字組みだけなのか、写真やイラストなどの図版も入るのか、一色刷りか多色刷りかなど、取り決めなければならないことがたくさんあります。

本の判型、ぺージ数、製作部数によっても費用の違いが出てきます。

本の仕様を変更していけば、それにしたがって費用も変わってきます。

また、印刷に入る前の段階までの作業は、部数に関係なく同じだけの費用がかかります。100部の本を作る場合でも、10000部の本を作る場合でも、原稿を作成したり、組み版をしたりする作業は必要だからです。したがって、印刷部数が二倍になったからと言って単純に制作費用が二倍になるわけではありません。一度に制作する部数が多いほど、割安になっていきます。


全国の書店での販売はできるのか

通常、書店に本が並べられているのは、出版流通機構によるものです。

「書店流通」を一般物流になぞらえていえば、メーカーである出版社、問屋の位置にある取次会社(以下、取次)(*1)、そして小売店である書店の三者によって構成されています。一年間に発行される書籍(*2)や雑誌が、このルートを通って消費者(読者)の手もとに渡っていることになります。

書店以外としては、コンビニやキヨスクなどでも出版物を販売しています。

出版社の数は4000社(*3)くらいで、そのうちの約八割が東京に集中しています。取次は日本出版取次協会に加盟しているところが42社あり、そこで扱われる出版物の売上げのおよそ六割が、二大取次といわれるトーハンと日販で占められています。一方、書店は全国に27,000店(*4)以上あります。二大取次を中心にこれら書店と出版社が結ばれるラインが、日本の出版流通の大動脈なのです。

出版社、取次、書店の間には、それぞれ取引するための特別な口座が設けられており、一般の人が単独・単品でこの流通システムを使うことはできません。現在では、出版社を新しく設立しても、取次との間で取引口座を新たに取得するのはむずかしくなっています。

したがって、本を正規ルートで書店流通させるためには、最低でも取次と取引(口座)のある出版社から発行しなければならないのです。

ただし、そういう出版社で本を制作したとしても、自費出版の書籍がすべて正規ルートで配本できるわけではありません。

「書店流通」が可能であると言っても、それが普通の商業出版と同様の流通であるとは限らないことにも注意が必要です。

ひと口に「書店流通」といっても三通りの解釈があります。

一つは、できあがった本を取次を通して全国の書店に配布するという「委託配本」(*5)の形態です。普通これを「書店流通」「正規ルート」と呼びます。

二つめは、数~数十軒の限られた書店(特約書店)に出版社から働きかけて(営業して)、主に返品条件付き(*6)で本の注文を貰い、その注文分だけを取次経由で流すというものです。

もう一つが、書店から本の注文があった時にのみ、出版社が取次に出荷して書店に回すことができるというものです。書店からの注文がない限り、書店には配本されません。

後者二つについては、出版社は注文品のみを扱うため、「委託配本」とは区別されます。



*1 取次とは、出版社と小売書店の中間にあって、書籍・雑誌などの出版物を出版社から仕入れ、小売書店に卸売りする販売会社のことをいいます。他の業種の問屋に相当しますが、卸す機能より取次ぐ機能が強かったため、問屋と呼ばず、自然に取次、取次店、取次会社という呼称が定着しました。その特徴的な機能としては、仕入れ、販売、物流、情報・PR、管理、金融、店売などあげられます。出版流通機構のかなめ的存在としての役割を持っており、取次があるおかげで、中小や地方の出版社でも全国の書店に本を流通させることができるのです。

*2 2000年の新刊発行点数は65,065点(「出版年鑑」より)。

*3 2000年度の統計で4391社(「出版年鑑」より)。

*4 2000年度の日本書店商組合連合会加盟店数は9316店。

*5 書店で販売されている本のほとんどが「委託販売」(一定期間内であれば、売れ残った本を返品できる方式)です。取次から全国の書店に新刊書籍を配布する「新刊委託」が典型的なものになります。あくまで委託であって買い切りではないため、返本(返品)制度があります。

*6 書店からの注文で出版社が出荷した注文品は、原則として「買い切り」となり、返品できません。しかし、出版社の承認で返品してもよい条件を付けることがあります。これが「返品条件付き買い切り」です。




 


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